ジャンガリアンハムスターの「ジャン」
トイプードルのむうちゃんが来る前のことです。
お庭の隅っこのお墓を見てなつかしくなって書いています。
我が家にハムスターの「ジャン」がやってきたのは娘が小学校1年生のとき。
娘は物心ついた頃から生き物大好きで、虫やトカゲでも可愛いよと連れてきてしまう所がありました。
近くにできたホームセンターのペット売り場から離れてくれない娘を見ていて、そんなに大好きでしっかりお世話ができるのなら、情操教育にもなるかなとハムスターを飼うことにきめました。
真っ白くて小さなふわふわの体に、真っ黒のクリクリお目々のハムスターが我が家にやってきた日の娘の幸せそうな顔、今でもハッキリと覚えています。
ハムスターは、ジャンガリアンハムスターという種類でとても綺麗な白いハムスターでした。
名前は「ジャン」、単純な娘は、それまで飼っていた夜店ですくった金魚は「金ちゃん」、このかわいい真っ白のハムスターはジャンガリアンハムスターだから「ジャン」
さすが娘ちゃん なんともわかりやすい名前です(笑)
ジャンは警戒心がなく、初めから人懐こく、すぐに手の平や膝の上に乗ってきます。
小学校から帰ってくるとすぐにジャンのゲージに向かい、一緒に遊んだり頭や背中に乗っけたり、自分の今日あった事を教えたりとまるで姉妹の様でした。
餌もバランスよくあげるんだよと、ペットショップでひまわりの種以外に、ドライ野菜やおやつクッキーを買ってきては嬉しそうにあげていました。
三日坊主の娘には考えられない世話ぶりで、よほど嬉しかったのだと思います。
1半年ほど経った頃です。娘が夏休み前に、お庭でひまわりを育てたいと言い始め、せっせと準備していました。
そんなある日、ジャンとの会話を聞いてある事が判ったのです。
「待っててね、大きなひまわりを咲かせて、新鮮なひまわりの種をお腹いっぱい食べさせてあげるからね」だそうです。
娘は大好きなジャンの為に、自らひまわりの種を収穫しようとしていたのです。
この行動に感心してそして涙が出ました。
夏休みに入り、ひまわりは八重ひまわり、ギンバひまわりと2種類大きな花を咲かせました。
その頃からジャンは、いつも固まって寝てばかりいる事が多くなっていました。
夏の暑さは半端なく、人間でも熱中症で救急車で運ばれている人が続出していましたから、ハムスターにもこの暑さはかなりこたえていたと思います。
夏休みもあと1週間というある日、「そろそろ種が収穫出来るよ」と娘が言ってきました。
まだ少し柔らかかったのですが、もう少し待って出来たての2粒だけジャンに味見してもらおうと、2粒だけ取りました。
ジャンは眠たそうで、目を半分開けた状態でヨロヨロ近づいてきて、娘の手の平でゆっくりと種を食べていました。
自分が育てたひまわりの種を食べてくれたと、娘はとても喜んでいましたが、元々寿命の短いハムスターです。ジャンの残りの日々が少ない事を、何となく感じながらその光景を見ていました。
夏休みもあと3日、全ての種が収穫出来た朝、ジャンは天国へ行きました。その顔は笑っている様に、お気に入りの場所で眠っている様にとても綺麗な顏で死んでいました。
「間に合わなかったね」と、種を握りしめて泣いている娘に、「間に合ったよ、ジャンは出来たての世界で1番美味しいひまわりの種を食べれたんだもん」と声をかけました。あの2粒の種はジャンにとっては最高の食事だったと思います。
娘と2人でお庭に作ったジャンのお墓。
リビングからお庭を覗くといつもすみっこにジャンのお墓が見えます。
いつまでもいっしょだよ。一緒に過ごせた時間は短かったけど、家族になってくれてありがとう。
楽しい思い出をありがとうジャン。
我が家にやってきたあの真っ白でふわふわのハムスターは、娘や私たち家族には天使の様な贈り物でした。